その木戸を通って

巨匠・市川崑が遺した、幻の名作

城勤めの無為な日々をおくる主人公・平松正四郎のもとにある日やってきた、記憶喪失の娘・ふさ。彼女の純粋な魂は、やがて、正四郎の人柄と人生を徐々に変えてゆく…。

2008年2月に92歳で他界した巨匠、市川崑監督。70数本におよぶその作品歴の中で、生涯ただ一本、未公開となっていたのが本作『その木戸を 通って』だ。わが国初の本格的長編ハイビジョンドラマとして1993年8月に完成しながら、その後BSで一度だけ流れた以外、人の目にほとんど触れること なく眠っていた本作品は、まさに“幻の逸品”。リリカルな正統派ドラマとしての気品と、市川監督ならではの映像美をあわせ持った、まさに宝石のような珠玉 作である。淡々とした夫婦の年代記の中に、日常生活のかけがえのなさ、人間同士の思いやりとやさしさ、人の真心が人の頑なさを穏やかにほぐしてゆくさまを 描き、静かな感動を呼ぶ。

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